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中国、北朝鮮、モンゴル 欧米各国で盛んなこの競技も、残念ながらアジアからの参加は今までは中国と日本だけだった。今回はDPRK(北朝鮮)、モンゴルが加わった。20数年前の中国チームはオリンピックの選手団のようだった。趣味として楽しんでいる西側の選手が集う世界選手権に、旧ソ連や共産圏諸国と同じように真剣勝負で取り組んできた。国家の後ろ盾があり、中国が過去の世界選手権で団体優勝した時のご褒美は家一軒だったそうだ。 改革が進み、今の中国チームには当時の面影はない。国家の後ろ盾がなくなった今、かろうじて模型を続けられるのは多少の余裕がある人と模型飛行機の情熱を絶やさない人だけ。個人、団体成績にかつての栄光は見る影もない。 昔の中国選手チームそのままの姿で、今回、北朝鮮が16年ぶりに華々しく国際舞台に返り咲いた。1970年代には世界選手権で優勝したこともあったが、その後国際舞台から姿を消していた。団長、副団長、通訳、サポーターと選手の15名の大選手団。しかも前述の「黒海カップ」にも出場して、充分な態勢で世界選手権に臨んでいる。 一糸乱れぬ選手の行動は異様な雰囲気であった。選手はアスリートそのものであり、自分の機体は自分で回収する。トランシーバーや双眼鏡、発信機などのハイテク装置は一切持たず、ものの見事に機体を回収して何キロも走って帰ってくる。視力が良いから上空で「点」のように小さくなった機体も肉眼でも見えるのだろう。
フリーフライト競技は身体能力で機体の性能をある程度カバーでき、国際舞台から遠ざかっていたとは言え、まずまずの成績を上げた。昔の中国チームもそうであったように、直前に行われた強化合宿のせいと思われるが、全員が真っ黒に日焼けしていた。現在、世界で唯一のプロ集団と言える。次回からはかなり上位へ食い込む事はほぼ間違いないであろう。 初参加のモンゴルは今回FAIのメンバーに正式加盟してエントリーをしたが、ビザ発給のトラブルでウクライナに入国できず、モスクワに戻って大使館の手続きを済ませてどうにか現地入りしたのは競技が始まってから。涙をのんだ。モンゴルもこれから国を挙げて子供達に模型飛行機を広める活動をすると聞いている。昔の中国のように国がサポートする体制が出来つつあり、まず手始めがフリーフライト模型であり、健全な模型飛行機普及活動が行われるようだ。 この競技は欧米主導で、今まではアジアからの参加が少なかったが、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドにアジアの国を含めた、「環太平洋諸国フリーフライト選手権」の構想も夢ではなくなってきた。ヨーロッパ選手権に対抗したものが実現するかもしれない。日本チームが今後活躍したとしても、日本での開催はあり得ない。世界選手権を開催できる広い場所がないのである。 閉会式 全ての競技を滞りなく終了して、30日の夜には宿舎から車で1時間ほどのところのナイトクラブを借り切って表彰式とバンケットが行われた。時間どおりに始まらないのは開会式と同じで、1時間半遅れでセレモニーはスタートした。会場となった施設は、いわゆるニューリッチ層を対象とした豪華なナイトクラブ。今までに経験したことのないような派手な演出の表彰式であった。庶民の生活をつぶさに見てきたこの1週間であったので、経済的な格差が広がっている現状をまざまざと見せつけられた感じがする。
・・・ 完 ・・・ かねがわ しげる
金川 茂氏は2007年、「空の日」航空関係者表彰において、航空スポーツ賞(団体賞)を受賞されました。 |
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