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 2026年10月 航空遺産写真 今月の1枚

摂政宮・裕仁親王の所沢飛行場視察

航空遺産継承基金事務局で所有している写真を毎月1枚ピックアップしてご紹介します。 

 今月は、航空協会がアーカイブしている資料の一つ、今川一策陸軍少将旧蔵写真から一枚紹介します。今日(2026年10月26日)からちょうど104年前に撮影された、所沢飛行場を視察する摂政宮・裕仁親王(後の昭和天皇)の写真です。
 1922年10月26日(大正十一年十月二十六日)、摂政宮は所沢陸軍飛行場を訪問し、飛行場にあった陸軍航空学校、陸軍航空部補給部所沢支部、気球隊を視察しました。このページでは、視察の様子を『日本航空史 明治・大正編』(日本航空協会編、1956)の記述と、『航空写真帖』(陸軍航空本部、1933)の写真等から見ていきます。
 十月二十六日、東宮殿下には久々で所沢飛行場へおでかけになつた。
 殿下が旅行その他お出ましの日は、大ていいつも好晴にめぐり合い、これも御人徳のしからしむるところであるが、この日ばかりはどういう風の吹きまわしか、雨がやまず、歓迎の飛行もとりやめとなつて冷たい秋雨の朝九時三十分、自動車で航空学校本部へお着きになつた。 —『日本航空史 明治・大正編』(p.641、pdf714コマ目)
 10月26日は秋雨で、朝行われるはずだった歓迎飛行も中止になりました。なお、10月21日の新聞記事によれば、裕仁親王が午前七時半に霞ヶ関離宮を出発する様子の空撮から、八時半の荻窪駅上空の歓迎飛行、十時の所沢飛行場上空のアクロバット飛行など、本来は大規模な飛行が予定されていたようです。
 
10月21日、5日後に予定された摂政宮の所沢行啓を報じる新聞記事

 雨で展示飛行等は中止になりましたが、裕仁親王は次の様に格納庫まで車で向かい、飛行機の整備などを見学しました。
 井上(幾太郎)航空部本部長、星野(庄三郎)航空局長官、中島(正武)近衛師団長らお出迎え申し上げ、将校集合室でご休憩の後、有川(鷹一)校長の先導で大格納庫へ自動車で成らせられ、下士兵が小沢中尉指揮で甲式一型機四台を整備する状況をご覧になり、そばでは河井田(義匡)中尉が発動機の装着や、緩衝ゴムの交換、点火栓の点検などを指揮している。殿下には有川校長にローン式回転発動機について種々御下問があり、松井(命)少佐が各種飛行機材について詳細ご説明申し上げ、殿下は一々うなずかれながら熱心に聞き入れられた。
所沢の格納庫を視察する裕仁親王。『航空写真帖』(陸軍航空本部、1933)に掲載された写真。左側の写真は、冒頭と同じもの。
 次いで客室型全金属製のユンカース式患者輸送機に、和田大尉がご案内すれば翼上に立たれ、客室内の模様や乗員席などを細かにご覧になつて再び将校集合室に入られ、陳列の各種器材、機関銃、無電器、自動操縦装置など、お目新しいものをご覧に入れた後、有川校長から学校の写真帖とプロペラー型の文鎮を献上した。
 このごろからはたして雨はやみ、雲の切れ間からほのぼのした薄日がさして来たので、本部前広場植込みに松樹のお手植をお願い申し上げ、終つて自動車で気球隊へ成らせられ、用意の御昼餐をとられた。
気球隊を視察する裕仁親王。『航空写真帖』(陸軍航空本部、1933)に掲載された写真。
 ご小憩の後、高橋気球隊員の御案内で演習場へお出ましになると米満、山口両中尉が搭乗して自由気球の飛揚準備が開始され、伝書鳩四羽が携行された。
 一方では飯島中尉が落下傘包を背負つて繋留気球に乗り込み、降下姿勢をご満足のいくまで見ていただくため、八〇〇㍍の高度へ上昇して飛び降り、微風に乗つてゆらりゆらり舞ひ下る白い大輪と飯島中尉の降下操作を、殿下にはしばし御興深げに注視された。
 自由気球は飛行場端上空五〇〇㍍で鳩を手放し、風に流されて東京方面へ漂漂と流れていくあとに、四羽の鳩は何か探すように円を描いて忙し気に舞つていたが、やがて方向がきまつたらしく威勢よく一斉に飛び去つていつた。
 午後二時、殿下お帰りの時間間際、F五〇、同六〇型二機が二〇〇㍍の低空にすさまじい爆音をまき散らしながら現われ、お召自動車をまもつて校門附近に達すると、甲式三型五機編隊がお見送りに参加してF型二機とともに田無町へんまでお供をして引返していつた。
—『日本航空史 明治・大正編』(p.641-642、pdf714-715コマ目、括弧内は筆者注)
 当日はこのように昼頃から天候が回復し、裕仁親王は、自由気球からの伝書鳩の放鳩や、繋留気球からのパラシュート降下の様子を視察し、編隊飛行の見送りを受けて飛行場を後にしました。
 今月は、ちょうど104年前の今日の写真をピックアップし、当日の様子が分かる関連資料とあわせて紹介しました。航空遺産継承基金では、今後も引き続き所蔵資料の保存・調査・公開に取り組んで参ります。

参考文献

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一般財団法人 日本航空協会
航空遺産継承基金事務局

 

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