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・はじめに 「アクロバット飛行」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか?ブルーインパルス?室屋さんのデモンストレーション?いずれにしても、アクロバット的な動きをする飛行機を下から見て楽しむものだと思っていませんか?じつは、飛行機あるいはグライダーをみずから操縦して宙返りやロールなどのアクロバット飛行を楽しむ、という楽しみ方もあるのです。そして、それを下から見てジャッジが採点するエアロバティック競技は、航空スポーツの一ジャンルとして世界的にはよく知られています。ここでは空を飛ぶ航空機に特化されていることを明らかにするために「アクロバット」という用語は使わずに、「エアロバティック(Aerobatic)」、あるいは「曲技飛行」という用語を使用しています。残念ながら日本ではそのようなスポーツを日常的に楽しむ環境が整っていないのであまりなじみがありませんが、航空機大国アメリカでは International Aerobatic Club(IAC)という統括団体があり、全米にわたる35の地方支部(チャプター)に愛好者が集まり、4月から10月のシーズンには、それぞれのチャプター主催の競技会が毎月全米のどこかの飛行場で行われているほど盛んなスポーツです(図1、図2)。 |
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図1 アメリカのエアロバティック競技会の様子(2014年、Delanoにて) |
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図2 アメリカのエアロバティック競技会の様子(2014年、Delanoにて) |
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・エアロバティック競技とは 例えば、スケート競技のスピードスケートとフィギュアスケートの関係が、飛行機によるスピード競技(エアレース)とエアロバティック競技によく似ています。エアレースはスピードスケートと同じように、決められたコースを飛行してそのタイムを競うものですが、エアロバティック競技は、上空に一辺が1km の仮想の立方体(Box)を設定し、その中におさまるようにループやロール、スピンなどの個々の技を組合せて、その正確性や統一性、芸術性などをジャッジが採点するという点で、フィギュアスケートと同じです。 |
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図3 Primaryクラスのシーケンスの例 |
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図4 Unlimitedクラスのシーケンスの例 |
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競技会で使用される飛行機はクラスによってもさまざまですが、特に下から3つ、Primary、Sportsman、Intermediateまでのクラスではセイフティー・パイロットの同乗が認められていますので、極端な話、その飛行機での離着陸ができなくても競技の参加は可能です。もちろんセイフティー・パイロットは、Box内で競技がひとたび開始されれば、安全上の理由がない限り操縦桿には触れませんし助言もできないことになっています。 |
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・エアロバティック競技世界選手権 国際航空連盟(FAI : Fédérationn Aéronautique Internationale)は航空スポーツを統括する国際組織であり、空のオリンピック委員会という位置づけで、IOCと同じように、スイス・ローザンヌに本部があります。FAIの傘下には、世界各国においてそれぞれ航空スポーツを統括するNAC(National Airsport Control)があり、日本では一般財団法人日本航空協会がこれにあたります。FAIは、航空文化の啓蒙活動を始めとして、記録認定や表彰などスポーツ航空に関連するさまざまな活動を行っていますが、世界選手権の開催もその主な活動の一つです。オリンピックにもいろいろな種目があるように、FAIで統括する航空スポーツにも、例えば模型航空機(ラジコン飛行機)、気球、パラシューティング、ハンググライダー/パラグライダー、エアロバティックス、ヘリコプター、グライダーなどさまざまなジャンルがあり、それぞれ競技会のためのルールを定めて、毎年世界各地で世界選手権を開催しています。 |
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図5 世界選手権に参加した日本チーム(グライダー・1995年) |
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図6 世界選手権に参加した日本チーム(飛行機・2012年) |
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・日本の現状は日本では、航空スポーツとして、模型航空機(ラジコン飛行機)、気球、パラシューティング、ハンググライダー/パラグライダーなどは競技人口も多く、国内での競技会も行われていますが、エアロバティック競技については競技人口が極めて少なく、航空スポーツとしてはほとんど知られていません。しかしそんな中でも、愛好者の強い希望と熱意、それを後押ししてくれる団体等の協力もあり、2010年に初めて第1回となる国内競技会を開催することができました(図7)。 |
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図7 第1回全日本曲技飛行競技会を伝える記事(『エアロバティックス公式ガイドブック』2011年版より) 拡大版はこちら |
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その後、第2回(2011)、第3回(2012)、第4回(2013)と回を重ねるごとに内容が充実していきましたが(図8、図9)、諸般の事情により第4回を最後に残念ながら途絶えてしまいました。 |
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図8 第2回全日本曲技飛行競技会(2011年)の公式ガイドブック表紙 |
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図9 第4回全日本曲技飛行競技会(2013年)の公式ガイドブック表紙 |
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このような競技会を開催するには、選手を含めた人、機体、そして何よりも重要な場所の3つがそろわなくてはなりません。日本のように山が多くて国土が狭く、自由に使える飛行場が少なく、かつ常に騒音問題を抱えている場所では地元の協力もままならず、かなり道は険しいのですが、選手権の開催あるいはその前段階の練習会やトレーニングキャンプの開催を目指して、有志により地道な努力が続けられているところです。加えて、世界選手権に選手を派遣している国々には必ずエアロバティック競技の統括団体が存在しているのですが、まだ日本にはそのような団体がありません。国内選手権を開催するためにも、Japan Aerobatic Clubというような団体の設立が望まれるところです。 |
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