News Release 一般財団法人 日本航空協会
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重要航空遺産
UF−XS実験飛行艇

所 有 者 防衛省海上自衛隊
保管展示  岐阜かかみがはら航空宇宙博物館
解 説 防衛庁では1960(昭和35)年に国産4発対潜哨戒飛行艇の新規開発のために実験機を用いた試験を行うこととし、アメリカからグラマンUF−1アルバトロス飛行艇(BuNo149822)の供与を受けてUF−XS実験飛行艇を製作した。ベースとなったアルバトロス飛行艇はアメリカのグラマン社が開発したもので、1947(昭和22)年に初飛行し、466機が生産されて各国で使用された。
実験機としての主な改造点は、波高3m程度の洋上に離着水するために波消し装置などの独自の構想に基づいた艇体が新規に設計されたこと、短距離離着陸性と低速時の操縦性を向上するために胴体内に追加した2基のターボシャフト・エンジンから主翼フラップ、エルロン、エレベータ、ラダーに高圧の空気を吹き出す機構を装備したこと、低速時の安定性を確保し操縦を容易にするために自動安定装置を装備したこと、双発から4発にしたことなどである。UF−XS実験飛行艇は1962(昭和37)年に初飛行し、海上自衛隊大村航空隊に由来するオ−9911の記号を垂直尾翼に記し1964(昭和39)年まで様々な実験を続けた。実験で得られた成果は戦後初の国産飛行艇となるPS−1飛行艇の設計に取り入れられ、最新のUS−2飛行艇にまで受け継がれている。
試験を終えたUF−XS実験飛行艇は海上自衛隊下総基地に移され1967(昭和42)年に用途廃止となり、同基地で保管されていた。1975(昭和50)年に静岡県清水市の東海大学社会教育センターに貸出され、かかみがはら航空宇宙博物館(当時)の展示機として1993(平成5)年に収蔵されるまで屋外展示されていた。博物館に運び込まれた時点で、高圧の空気を吹き出すために追加された2基のターボシャフト・エンジンおよびダクト等の部品は失われていた。また、屋外展示のために金属腐食が進んでいる個所もあった。さらに、見学者を機内に入れるための開口部や鉄板の通路を新たに設置する改造などが行われていたことにより、実験機として使用されていた当時の状態と大きく異なってしまっていた。そのため、機体を改造した新明和工業株式会社により、当時の製造図に基づいて修復・復元が行われた。なお、失われていた部品を再現する際には、オリジナルと複製品の区別がつくように識別用のスタンプを押すなどのオリジナルの部分とそれ以外を区別するための処置がとられている。
UF−XS実験飛行艇はPS−1飛行艇開発の目的でただ1機製作された希少な機体であり、飛行艇として世界最高水準の性能を有するUS−2飛行艇にまで続く戦後日本の飛行艇開発の原点である。また、博物館で実施された適切な修復・復元処置により実験機としての使用当時の状態を取り戻し、文化財的価値を有している。
これらのことから、防衛省海上自衛隊が所有し、かかみがはら航空宇宙科学博物館が保管・展示するUF−XS実験飛行艇は日本の飛行艇開発の歴史を伝える貴重な航空遺産と言える。


UF−XS実験飛行艇


UF−XS実験飛行艇の操縦席

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2014.3.28から設置