IATAスロット会議の概要
その他国・都市・空港事情
『航空と文化』2010年第100号(新春号)に事務局発足2年の足跡を報告、『航空と文化』2012年第104号(新春号)において事務局発足4年の足跡を報告いたしました。今回は国際線発着調整業務を実施する上で非常に重要な会議で、夏ダイヤ前、冬ダイヤ前に年2回開催されるIATAスロット会議の概要について報告をしたいと思います。IATAのような国際会議というと、大会議場において議長、副議長、書記が壇上に鎮座し、多くの参加者がイアホンを耳に会議に参加しているような風景を皆さん想像されると思いますが、実際には全く異なります。基本は、個別面談なので、議長も副議長もいませんし、開会の挨拶もなければ、閉会の挨拶もありません。航空会社と発着調整事務局との全くビジネスライクな個別面談が淡々と実施されています。この記事により、IATAスロット会議の実態に理解を深めていただけると幸いです。
1.IATAスロット会議(Slot Conference)
発着調整業務は、世界共通のIATAガイドラインであるWSG(Worldwide Slot Guidelines)、SSIM(Standard Schedule Information Manual)に従い、インターネット回線等を通じシステム上で調整されますが、スケジューラー、コーディネーター等が一堂に会して直接的に調整する会議が年2回開催されます。
IATA指定の世界140程の混雑空港を担当するコーディネーターと、当該空港に乗入れ、あるいは乗入れを希望する航空会社のスケジューラーが一堂に会し、乗入れ希望の時間調整を行うための活動の場です。ちなみに、IATAへの加盟、非加盟を問わず、世界中から約250の航空会社のスケジューラーと、混雑空港のスロットを管理するコーディネーター等を合わせ1000人近くの参加がある大きな会議です。
(1)毎年6月(冬ダイヤ調整)、11月(翌年の夏ダイヤ調整)の年2回開催されます。
(2)会期は3日間です。
(3)開催地は、世界的地域バランスを考慮しIATAが選定します。
2.過去の開催地
開催地については、IATAが地域バランスを考慮して開催することとなっていますが、下記の開催状況を見ても解るとおり、北米、欧州を中心として開催されてきています。過去8年間を通じて、アジア地域での開催は4回しかありません。また、日本においては、大阪で開催されたのみで、国内の他の都市で開催された実績はありません。国内第一の都市である東京地区での開催が非常に望まれているところであります。
第 113 回 | 2003年11月 | シンガポール |
第 114 回 | 2004年 6月 | トロント、カナダ |
第 115 回 | 2004年11月 | ボストン、アメリカ |
第 116 回 | 2005年 6月 | ベルリン、ドイツ |
第 117 回 | 2005年11月 | 大阪、日本 |
第 118 回 | 2006年 6月 | バンクーバー、カナダ |
第 119 回 | 2006年11月 | ダラス、アメリカ |
第 120 回 | 2007年 6月 | ドレスデン、ドイツ |
第 121 回 | 2007年11月 | トロント、カナダ |
第 122 回 | 2008年 6月 | ボストン、アメリカ |
第 123 回 | 2008年11月 | アテネ、ギリシャ |
第 124 回 | 2009年 6月 | モントリオール、カナダ |
第 125 回 | 2009年11月 | バンクーバー、カナダ |
第 126 回 | 2010年 6月 | ベルリン、ドイツ |
第 127 回 | 2010年11月 | メルボルン、オーストラリア |
第 128 回 | 2011年 6月 | ヨーテボリ、スウェーデン |
第 129 回 | 2011年11月 | シンガポール |
第 130 回 | 2012年 6月 | バルセロナ、スペイン |
3.会議の概要
(1) | スケジューラー、コーディネーター等が個別に面談を行います。(1社15分間ずつ) | ||||||||||||
(2) | 面談においては、リクエストの確認、リクエストが叶わない理由の説明、新たな提案、情報交換等を行います。 (航空会社情報、今後の空港の整備状況等) | ||||||||||||
(3) | 発着調整に係わる問題点、ガイドラインの見直等を行う各種委員会も同時開催されます。
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4.個別面談の状況
当発着調整事務局においては、本邦・外国航空会社約70社とスケジュール調整を行っていますが、この会議において殆どの航空会社と面談を行います。面談は1社15分という時間制約がありますので、航空会社が入れ替わり立ち代わりの状態で、調整を繰り返します。前回のSC130においては、初日25社、2日目25社、3日目10社の60社と面談を行っています。昼食、コーヒーブレークを除いて、本当に休む暇もない状況で面談の予約でびっしりでした。
当発着調整事務局は、調整空港数も多く、職員も多いので、会議では左下のような単独会議室(有料)を利用していますが、少人数の事務局は右下のようなIATAが用意した共用会議室(無料)を利用しています。左下の写真は、ユナイテッド航空との面談でしたが、欧州委員会(EC)が発着調整の状況(IATAに準拠した調整方法が採用されているか否か)を確認するため、オブザーバー参加しているものです。各空港の発着時間の調整が主たる内容ですが、今後の空港整備状況、国際航空政策についても説明します。
5.最近の開催状況
直近2回の会議開催状況を下記に示しますが、やはり1000人近い参加がある大きな会議であることが理解できます。展示者としては、空港セールスを積極的に実施している世界の主要空港が参加しています。日本では、成田国際空港㈱が参加していますが、その他の国際空港㈱の参加も望まれます。システム会社としては、航空会社の旅客予約システム、運航管理システム、スケジュール管理システム等を販売する大手のソフト開発会社が多く参加しています。
(1) | 第 129 回 IATAスロット会議の例(2011年11月、シンガポールで開催) | |
- 航空会社:204社530人 | ||
- 発着調整事務局等:59組織210人 | ||
- 展示者:空港会社、システム会社多数 | ||
- オブザーバー(政府機関等):7組織9人 | ||
(2) | 第 130 回 IATAスロット会議の例(2012年 6月、スペイン・バルセロナで開催) | |
- 航空会社:206社530人 | ||
- 発着調整事務局等:62組織230人 | ||
- 展示者: 空港会社、システム会社多数 | ||
- オブザーバー(政府機関等):11組織22人 |
6.会議の誘致合戦
開催地はIATAが地域バランスを考慮して決定されると説明しましたが、実際にはオリンピックの誘致と同様、各都市が立候補し誘致合戦を繰り広げます。全世界の殆どの航空会社が参加する会議ですので、世界への航空路線を拡充し国際観光の振興を考える都市、また少しでも多くの航空会社を誘致したい国際空港会社が中心となり誘致を働きかけます。2005年SC117大阪の開催においては、関西経済連合会、大阪商工会議所、関西国際空港㈱が中心となり、誘致を働きかけました。SC117においては、大阪国際会議場+リーガホテルが会場となり、舞子さんとの写真会、お茶会、レセプションでの和太鼓演奏と多くのアトラクションを催し、大いに大阪をアピールしました。
誘致条件で評価されるのは、会場設定経費の安さ、国際会議場+ホテルの立地条件、会議に付随するレセプション、オプショナルツアーの内容、地元の熱意等であります。SC117(大阪)、SC126(ベルリン)におけるレセプションの写真を示しますが、鏡割り、有名バンドなどの演奏等が行われていました。
7.今後の開催予定
今後の予定は下記のように決定されており、現在2014年、2015年の開催地に関する立候補地の提案を待っているところであります。2014年はアジア地域での開催が予定されており、特に東京地区での開催が期待されるところです。
(1)第 131 回 IATAスロット会議は、2012年11月、カナダ・トロントで開催予定。
(2)第 132 回 IATAスロット会議は、2013年6月、デンマーク・コペンハーゲンで開催予定。
(3)第133回IATAスロット会議は、2013年11月、アメリカ・フォートワースで開催予定。
(おわり)