「国際線発着調整事務局」による新千歳空港の発着調整業務の開始

 「国際線発着調整事務局」が2008年1月に設置された当時は、成田国際空港と関西国際空港のみの発着調整業務を提供していましたが、東京国際空港(羽田)が国際化された事に伴い2010年2月に羽田空港の発着調整業務が追加となりました。また、2012年8月には新千歳空港が新たに混雑空港としてIATA(国際航空運送協会)より指定され、当事務局に追加となった結果、現在4空港の発着調整業務を担当しています。今回は、新規追加となった新千歳空港の概要について説明を行いたいと思います。

1.新千歳空港の概要

 新千歳空港は北海道最大の空港であり、札幌市の南東約40kmに位置し、北海道の空の玄関口として機能しています。新千歳空港は、航空自衛隊千歳基地と隣接・接続されており、空港の東側は航空局の管理、空港の西側は防衛省の管理となっています。なお、航空管制は航空自衛隊が一元的に提供しています。
 航空局側には3,000mの滑走路が2本、防衛省側には2,700mと3,000mの滑走路が存在し、万が一の場合には双方が滑走路を共用することも可能となっています。

2.航空輸送実績

 2006年からの航空輸送実績(離発着回数、輸送旅客数)を下記に示します。新千歳空港は、日本では羽田、成田についで3番目に旅客数の多い空港で、羽田-新千歳路線が最も混雑しており、年間約940万人のお客様が利用しています。しかしながら、国際線の割合は6%と国内線中心の空港となっています。

暦年2006年2007年2008年2009年2010年 
離発着回数国際5,5845,6845,8905,7486,394
国内97,68696,75094,33493,904102,812
合計103,270102,434100,22499,652109,206
輸送旅客数国際749,106801,948794,864795,054947,148
国内17,643,52917,527,46416,861,39815,742,51215,801,032
合計18,392,63518,329,41217,656,26216,537,56616,748,180

3.国際線、国内線旅客ターミナルビル

 新千歳空港の特徴は、半円形の形状をした旅客ターミナルビルで、1992年に国内線、国際線の両方をサービスする施設として供用されました。ところが、国際線の急増により、新国際線ターミナルビル建設の必要性が生じ、現ターミナルの反対側である防衛省側に建設が決まり2010年から供用が開始されました。国際線ターミナルビルは、駐車場をまたぐ形の連絡橋により、国内線ターミナルビルと連接されておりJRや国内線からの乗り継ぎも容易となっています。
 国内線ターミナルには、円弧上に18基のボーディングブリッジが等間隔で並んでおり、大部分がボーイング747型機クラスの大型機も使用可能となっています。
 国際線ターミナルには、5基のボーディングブリッジが設備されており、年間100万人の利用客にも十分対応可能な処理能力を持ち、将来的な拡張も可能となっています。

4.2013年夏期スケジュールの調整結果

 2013年夏期スケジュール(3月31日(日)〜10月26日(土))に対する航空会社のスケジュール要望提出締切日が10月11日(木)でした。この航空会社要望を受け発着調整事務局内にてスケジュール調整を行ない、11月1日(木)に一次回答を行いました。航空会社の当初の要望スケジュールを下のグラフに示しますが、午前10時台から午後3時台まで規制値(一時間あたり32回)を超える要望があり、調整には大変な苦労がありました。

5.航空会社の要望内容

 2013年夏期スケジュールについては、本邦及び海外航空会社から約9万スロットの要求がありました。その内訳を見ると、やはり国内線が圧倒的であり、国際線シェアーは5%にすぎない結果となっています。
 国内線に関しては、従来のJAL、ANA、エア・ドゥ、スカイマークに加え、格安航空会社(LCC)であるJet Star Japan(JAL系)、Air Asia Japan(ANA系)、Peach Aviation(ANA系)の参入、増便があり活況を呈してきています。

 また、国際線の地域別航空会社のシェアーを見ると、本邦航空会社のシェアーが0%となっており若干寂しい感がありますが、アジアの航空会社が圧倒的に多く85%とシェアーの殆どを握っている状況となっています。今後、新千歳空港がバランス良く発展するためには、本邦社の国際線、アジア以外の航空会社を積極的に開拓する必要があると思われます。

6.国際線発着調整事務局の今後

 成田国際空港においては、誘導路の新設、改良、駐機場の増設等により、2013年夏期スケジュールより27万回へと容量が拡大され、オープン・スカイ政策が適用される予定であります。また、東京国際空港(羽田)においては、C滑走路の延長、国際線ターミナルビルの拡張等により2014年夏期スケジュールから約44万回へと容量が拡大される予定であります。関西国際空港においては、昨年格安航空会社(LCC)専用ターミナルが供用されたことに加え、フェデックス航空の貨物専用ハブ空港となる予定であり、今後益々容量が増える傾向にあります。当事務局においては、引き続きこれからの数年も成田、羽田、関西、新千歳空港の容量拡大について、目が離せない状況が継続する見通しであります。
 当事務局としては、今後もIATAの国際的ガイドラインに従い中立、公正、透明性を確保しながら、国際線発着調整業務を提供していく決意でありますので、引き続きのご理解、ご支援をお願いいたします。

執筆

一般財団法人 日本航空協会
国際線発着調整事務局

*本記事は『航空と文化』(No.106) 2013年新春号からの転載です。

*国際線発着調整事務局のホームページはこちら

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