「YS-11国産旅客機44年の航跡」展示会開催 |
日本航空協会 |
航空遺産継承基金事務局 |
【展示会開催】 |
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上野の国立科学博物館において、平成18年9月20日(水)から10月22日(日)までの間、国立科学博物館と共にニュース展示「YS-11国産旅客機44年の航跡」と題した展示会を開催しました。 |
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【開催の趣旨】 |
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戦前までの日本の航空機生産数は、アメリカ、ソビエト、イギリス、ドイツに続くほどの規模であったことや、ジェット機を飛行させたのも、ドイツ、イタリア、イギリス、アメリカについで世界で5番目と、かつてわが国の航空機開発能力や生産規模は世界でも有数のものでした。また、「零戦」「隼」に代表される軍用機ばかりでなく、旅客輸送のための航空機の開発も既に戦前から行われていたなども、今日、残念ながら一般の人々には知られていません。
戦後しばらくの間活動を禁止されたかつて航空産業に従事した技術者や技術そのものが、戦後日本の産業基盤に広く行き渡り今日の繁栄の基礎となったことは紛れもない事実です。航空機開発は単に航空機の開発に直結する航空技術だけでは成り立ちません。最先端の材料や生産技術、それにも増して周辺産業などを含んだ基盤となる幅広い総合工業力が備わって初めて成り立つものです。この度の展示会では、戦後初の国産輸送機YS-11が本年9月をもってわが国のエアラインでの運航を終えるのを機会に航空輸送をサブテーマとして、工業製品としてその時々の最高水準を示す航空機の開発の一面を振り返り、21世紀も科学技術立国を目指すわが国の今後のありかたを考えてみることとしました。 |
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【付随イベント】 |
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また、展示だけでは十分お伝えすることの出来ないYS-11の設計、開発、試験、認証、運用、アフターサービス等、多岐に亘る事実を多くの方に知っていただくため、航空ジャーナリスト協会、宇宙航空研究開発機構を始めとする関係機関のご協力により、「さようならYS-11・第1部、2部」「ありがとうYS-11」と題したシンポジウムを3日間にわたり開催いたしました。シンポジウムに対する関心も高く、メディア関係者を含め291名の参加がありました。付随イベントとして実施した「YS-11を飛ばそう・紙飛行機教室」「YS-11フライトシミュレーター教室」等にも多数の方にご参加いただきました。 |
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【概要】 |
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展示は国立科学博物館新館の2階「科学と技術の歩み」と題した理工学関係の展示スペースにおいて、以下の3つのコーナーにより構成しました。 |
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(1)世界の大空を飛び続けるYS-11 |
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(2)日本の空を飛んだ旅客機(1928〜1945) |
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(3) 国産旅客機開発のみちのり |
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今まで紹介されることの少なかった航空機開発の側面をお見せすると同時に、YS-11が運んだ東京オリンピックの聖火や戦前の輸送機の設計図やエアラインのポスター、そして戦前の輸送機による記録飛行等を取り上げ、長期にわたるわが国の航空機開発の取り組みの一端を紹介しました。 |
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【YS-11全生産機】 |
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「世界の大空を飛び続けるYS-11」のコーナーでは、当基金の賛助員でもある下郷松郎氏が撮影したYS-11生産182機ほぼ全ての機体の写真を、壁面一面に展示すると共に、国立科学博物館が羽田空港に収蔵する量産1号機の説明パネルおよびわが国で使われたYS-11の模型を展示し、YS-11全生産機を紹介しました。余談になりますが、壁一面に展示されたYS-11の写真は、斜め横方向から見ると写真の中に配された雲の写真が「YS-11」の形になるという凝ったデザインでした。が、チョットわかりにくくは果たして何人の方に気づいていただけましたでしょうか。 |
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【戦前の旅客輸送】 |
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「日本の空を飛んだ旅客機(1928〜1945)」のコーナーでは、まずは「日本航空輸送株式会社」「大日本航空株式会社」等、戦前の航空会社の資料として時刻表や空路図、航空会社のステッカーや絵葉書、ポスターを始めとする多くの資料により、当時から現在と同様なエアラインが活動していたことを紹介しました。同時に、当時使用されていた旅客輸送機の中島AT-2やDC-3の図面と共に川西97式飛行艇のパンフレットや三菱MC-20離着陸試験記録を始めとする資料、当時製作された輸送機の模型等を展示し、戦前のわが国の旅客輸送機開発の一面もお見せしました。また、96式陸上攻撃機をベースとした輸送機「ニッポン」号の世界一周飛行に関する資料も多数展示しました。飛行を企画した毎日新聞社が作製した多くの記念品のほかにも、塗料や接着剤まで入ったニッポン号のソリッドモデルのキットからコリントゲームにいたるまで、当時いかに多くの人々が航空に関心を抱きその一挙一同に熱いまなざしを注いだかを紹介しました。展示資料の多くを当基金専門委員の藤田俊夫氏および賛助員の柳沢光二氏にお借りすることが出来、オリジナル資料がもつ迫力と共に当時の雰囲気までをもお伝え出来たのではないでしょうか。 |
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【戦後の国産輸送機開発】 |
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「国産旅客機開発のみちのり」では、航空機の性能を測定するのに欠かすことのできない離着陸測定装置や標準ピトー管、曳航静圧管装置などの機器類などを展示し、今まで紹介されることの少なかった航空機開発の側面をお見せしました。裏話になりますが、これらの機器は昨年の名古屋空港移転の際に廃棄されることになっていましたが、当基金の専門委員でもある藤原洋氏のご尽力と共に当基金事務局も協力の上、国立科学博物館で所蔵することが決まったものです。離着陸測定装置等の機器は長年倉庫で眠っていたこともあり、航空局の検査官として実際に機器を操作されていた藤原氏の指導の下、清掃・組み立てを行い、非常によい状態で展示することが出来ました。また、航空機としての耐空性を保証するために航空宇宙技術研究所で実施された疲労試験等に関する資料も展示しました。YS-11に直結する資料としては、試作機および量産機の3面図、マニュアルに使われた図面類の原本から、海外への販売のために作成された英語、フランス語で書かれたパンフレットや国立科学博物館が所蔵する量産初号機のフライトログなど多岐にわたる展示を行いました。さらに、東京オリンピックの聖火の火種を運んだことから、聖火トーチもお借りし展示に花を添えることが出来ましたので、多くの方にYS-11が開発された時代を身近なものとして思い起こしていただけたのではないでしょうか。 |
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コーナーの最後には「国産航空機開発の今」として三菱重工業が検討をしている新たな旅客機MJや本田技研工業が開発を行ったHondaJetの模型もあわせて展示いたしました。 |
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開催にあたり、貴重な資料を快くご出展いただきました所蔵者の皆様、ご協力いただきました関係機関および関係各位に、心から御礼申し上げます。なお、展示会の記録集を作成中です。賛助員の皆様には完成次第お送りいたします。 |
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